内容

監理技術者証がない監理技術者とは

監理技術者証がない監理技術者が足りない業種等の問題

専任特例1号とは

 1. 1億円未満の請負金額

 2. 工事現場間の距離と移動時間は概ね2時間以内

 3. 3次下請までの範囲

 4. 1年経験の連絡員の配置

 5. 施工体制の確認方法

 6. 人員配置計画書の作成・備え置き・保存

監理技術者の責任の注意点

参考法令

 

建設業法

(主任技術者及び監理技術者の職務等)

第二十六条の四 主任技術者及び監理技術者は、工事現場における建設工事を適正に実施するため、当該建設工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理及び当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督の職務を誠実に行わなければならない。

2 工事現場における建設工事の施工に従事する者は、主任技術者又は監理技術者がその職務として行う指導に従わなければならない。

 

監理技術者証がない監理技術者とは

監理技術者には監理技術者証がない技術者もおります。

その場合、「特定営業所技術者」、すなわち特定建設業許可の営業所の専任技術者になれる価値があります。

また、請負金額によって、監理技術者として配置できます。

 

監理技術者証がない監理技術者が足りない業種等の問題

監理技術者証がない監理技術者は、現場専任ができません。

業種によっては資格者も豊富なので、監理技術者証を取得できる1級技術検定合格者は多いと存じます。

しかし、業種によっては、監理技術者証を取得することも1級技術検定合格者や、他の法令の免許取得者が少ないこともあります。

その場合、監理技術者証がある監理技術者を専任となる現場の請負金額4500万円以上、建築一式9000万円以上に配置することになりますが、現場専任の監理技術者の要件を現場毎に満たすのは大変なこともあります。

 

建設業法

(主任技術者及び監理技術者の職務等)

第二十六条の四 主任技術者及び監理技術者は、工事現場における建設工事を適正に実施するため、当該建設工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理及び当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督の職務を誠実に行わなければならない。

2 工事現場における建設工事の施工に従事する者は、主任技術者又は監理技術者がその職務として行う指導に従わなければならない。

 

建設業法第26条では、建設工事の現場に主任技術者や監理技術者を置くことが義務付けられています。

 

特に、公共性のある施設や多数の人が利用する施設に関する重要な建設工事(以下、「特定建設工事」という)では、監理技術者は工事現場ごとに専任である必要があります。

 

しかし、建設業法第26条第3項但し書きでは、以下の2つの例外規定(特例1号、特例2号)が定められています。

 

専任特例1号とは

監理技術者証がある専任現場について、兼務可能な特例がいくつか創設や改正をされています。その一つが「専任特例1号」です。

兼務の要件をすべて満たす場合、主任技術者または監理技術者は専任でなくてもよいとされています。

法令では、以下の要件が定められています(建設業法第26条各項、建設業法施行規則第17条の2)。

 

1. 1億円未満の請負金額(建築一式は2億円未満)

 兼務する各工事の請負額が1億円未満である必要があります。ただし、建築一式工事の場合は2億円未満で可能です。

2. 工事現場間の距離と移動時間は概ね2時間以内

同一の主任技術者または監理技術者を置こうとする建設工事の工事現場間の距離が、これらの者がその一日の勤務時間内に巡回可能なものであり、かつ、一の工事現場において災害、事故その他の事象が発生した場合における当該工事現場と他の工事現場との間の移動時間がおおむね二時間以内であること。

下請契約の制限

 

3. 3次下請までの範囲

特例1号の適用を受ける建設工事の全部または一部について締結される下請契約が、以下のものに限られること。

一次下請契約(特例1号の主任技術者または監理技術者を置く建設業者が注文者となった下請契約)

二次下請契約(一次下請契約の建設業者から直接建設工事を請け負った建設業者が注文者となった下請契約)

三次下請契約(二次下請契約の建設業者から直接建設工事を請け負った建設業者が注文者となった下請契約)

 

4. 連絡員の配置

専任特例1号の建設工事を請け負った建設業者が、主任技術者または監理技術者との連絡その他必要な措置を講ずるための者(土木一式工事または建築一式工事の場合は、1年以上の実務経験を有する者に限る)を当該建設工事に置いていること。

 

5. 施工体制の確認方法

専任特例1号の建設工事を請け負った建設業者が、工事現場の施工体制を主任技術者または監理技術者が情報通信技術を利用する方法により確認するための措置を講じていること。

例えば、建設キャリアアップシステムのAPIを使ったツール等が望ましいとされます。しかし、その他の現場確認ツールも可能です。

 

6. 人員配置計画書の作成・備え置き・保存

特例1号の建設工事を請け負った建設業者が、以下の事項を記載した人員の配置を示す計画書を作成し、工事現場に備え置き、かつ、帳簿の保存期間と同じ期間営業所で保存していること。

  • 建設業者の名称および所在地
  • 主任技術者または監理技術者の氏名
  • 主任技術者または監理技術者の一日あたりの労働時間(見込みと実績)
  • 建設工事の名称、所在地、内容、請負代金額
  • 工事現場間の移動時間
  • 実際に締結された下請契約の種類(一次、二次、三次)
  • 連絡担当者の氏名、所属会社、実務経験内容(土木一式工事または建築一式工事の場合)
  • 情報通信技術を利用した確認措置の内容
  • 情報通信機器

 

監理技術者の責任の注意点

専任特例1号、2号のいずれの場合も、監理技術者の責任が免除されるわけではありません。

監理技術者は、工事現場の状況を把握し、適切な指導・監督を行う必要があります。

 

参考法令

本解説は、以下の法令が根拠です。

建設業法第26条

建設業法施行令第27条

建設業法施行規則第17条の2

 

建設業法施行令

(専任の主任技術者又は監理技術者を必要とする建設工事)

第二十七条 法第二十六条第三項の政令で定める重要な建設工事は、次の各号のいずれかに該当する建設工事で工事一件の請負代金の額が四千五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、九千万円)以上のものとする。

一 国又は地方公共団体が注文者である施設又は工作物に関する建設工事

二 第十五条第一号及び第三号に掲げる施設又は工作物に関する建設工事

三 次に掲げる施設又は工作物に関する建設工事

イ 石油パイプライン事業法(昭和四十七年法律第百五号)第五条第二項第二号に規定する事業用施設

ロ 電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第五号に規定する電気通信事業者(同法第九条第一号に規定する電気通信回線設備を設置するものに限る。)が同条第四号に規定する電気通信事業の用に供する施設

ハ 放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第二十三号に規定する基幹放送事業者又は同条第二十四号に規定する基幹放送局提供事業者が同条第一号に規定する放送の用に供する施設(鉄骨造又は鉄筋コンクリート造の塔その他これに類する施設に限る。)

ニ 学校

ホ 図書館、美術館、博物館又は展示場

ヘ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条第一項に規定する社会福祉事業の用に供する施設

ト 病院又は診療所

チ 火葬場、と畜場又は廃棄物処理施設

リ 熱供給事業法(昭和四十七年法律第八十八号)第二条第四項に規定する熱供給施設

ヌ 集会場又は公会堂

ル 市場又は百貨店

ヲ 事務所

ワ ホテル又は旅館

カ 共同住宅、寄宿舎又は下宿

ヨ 公衆浴場

タ 興行場又はダンスホール

レ 神社、寺院又は教会

ソ 工場、ドック又は倉庫

ツ 展望塔

2 前項に規定する建設工事のうち密接な関係のある二以上の建設工事を同一の建設業者が同一の場所又は近接した場所において施工するものについては、同一の専任の主任技術者がこれらの建設工事を管理することができる。

(法第二十六条第三項第一号イの金額)

第二十八条 法第二十六条第三項第一号イの政令で定める金額は、一億円とする。ただし、当該建設工事が建築一式工事である場合においては、二億円とする。

 

建設業法施行規則

(法第二十六条第三項第一号ロの国土交通省令で定める要件)

第十七条の二 法第二十六条第三項第一号ロの国土交通省令で定める要件は、次に掲げるものとする。

一 同一の主任技術者又は監理技術者を置こうとする建設工事の工事現場間の距離が、これらの者がその一日の勤務時間内に巡回可能なものであり、かつ、一の工事現場において災害、事故その他の事象が発生した場合における当該工事現場と他の工事現場との間の移動時間がおおむね二時間以内であること。

二 前号の建設工事の全部又は一部について締結される下請契約が、次に掲げるものに限られること。

イ 前号の主任技術者又は監理技術者を置く建設業者が注文者となつた下請契約(第五号ニ(5)において「一次下請契約」という。)

ロ イの建設業者から直接建設工事を請け負つた建設業者が注文者となつた下請契約(第五号ニ(5)において「二次下請契約」という。)

ハ ロの建設業者から直接建設工事を請け負つた建設業者が注文者となつた下請契約(第五号ニ(5)において「三次下請契約」という。)

三 第一号の建設工事を請け負つた建設業者が、同号の主任技術者又は監理技術者との連絡その他必要な措置を講ずるための者(当該建設工事が土木一式工事又は建築一式工事である場合は、当該工事に関する実務の経験を一年以上有する者に限る。)を当該建設工事に置いていること。

四 第一号の建設工事を請け負つた建設業者が、当該工事現場の施工体制を同号の主任技術者又は監理技術者が情報通信技術を利用する方法により確認するための措置を講じていること。

五 第一号の建設工事を請け負つた建設業者が、次に掲げる事項を記載した人員の配置を示す計画書を作成し、当該工事現場に備え置き、及び第二十八条第一項に規定する帳簿(第二十六条第六項の規定による記録が行われた同項のファイル又は電磁的記録媒体を含む。)の保存期間と同じ期間営業所で保存していること。

イ 当該建設業者の名称及び所在地

ロ 第一号の主任技術者又は監理技術者の氏名

ハ 当該主任技術者又は監理技術者の一日あたりの労働時間のうち労働基準法(昭和三十二年法律第四十九号)第三十二条第一項の労働時間を超えるものの見込み及び当該労働時間の実績

ニ 当該建設工事に係る次の事項

(1) 当該建設工事の名称及び工事現場の所在地

(2) 当該建設工事の内容

(3) 当該建設工事の請負代金の額

(4) 第一号の移動時間

(5) 一次下請契約、二次下請契約及び三次下請契約のうち実際に締結されたもの

(6) 第三号の者の氏名、所属会社及び当該建設工事に関する実務の経験の内容(実務の経験の内容については、当該建設工事が土木一式工事又は建築一式工事である場合に限る。第十七条の五第一項第五号ニ(6)において同じ。)

(7) 前号の措置

(8) 次条の情報通信機器

2 前項第五号イからニまでに掲げる事項が、電子計算機に備えられたファイル又は電磁的記録媒体に記録され、必要に応じ建設業者において電子計算機その他の機器を用いて明確に紙面又は出力装置の映像面に表示されるときは、当該記録をもつて同項に規定する計画書への記載に代えることができる。

(法第二十六条第三項第一号ハの国土交通省令で定める措置)

第十七条の三 法第二十六条第三項第一号ハの国土交通省令で定める措置は、前条第一項第一号の主任技術者又は監理技術者が当該工事現場以外の場所から当該工事現場の状況の確認をするために必要な映像及び音声の送受信が可能な情報通信機器が設置され、かつ、当該機器を用いた通信を利用することが可能な環境が確保されていることとする。

 

この記事の監修者

谷島 亮士
谷島 亮士