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特定建設業許可の専任技術者とは?経験や資格の要件等

 

制度解説 #経営者 #法務部 #コンプライアンス #建設業許可 #専任技術者 #専技 #特定建設業許可 #主任技術者 #監理技術者

 

 

Q. 特定建設業許可の要件の一つである、専任技術者(営業所専任技術者)とは一般建設業許可とどのように異なりますか?

 

A. 一般建設業許可の専任技術者の要件につきましては前述いたしましたが(『一般建設業許可の専任技術者とは?経験や資格の要件等』)、特定建設業許可における専任技術者の設置要件は、一般建設業許可の専任技術者の要件に加えて更に厳しい要件が課されています。(建設業法第15条第2号)

 

 

1.一般建設業と特定建設業(建設業法第3条第1項)

そもそも建設業の許可は、一般建設業と特定建設業の2つに区分されています。この「特定建設業の制度」とは、下請負人の保護などのために設けられているもので、特に①下請契約の金額に対する制限(法第3条第1項第2号、第16条)、②「専任技術者」に関する要件(法第15条第1項第2号)、③「財産的基礎等」(法第15条第1項第3号)に関する要件について、法令上特別の資格や義務が課せられており、一般建設業の許可要件に加えて更に厳しい要件が求められています。

 

「下請契約金額の制限」とは…(2023年1月1日から施行)

これは、工事の全部又は一部を下請に出す場合の下請契約の金額(消費税込)に対する制限であり、その下請代金が4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上、複数の下請業者に出す場合は、その合計額)となる場合は「特定建設業の許可」が必要になるという制度です。下請に出す場合の下請契約の金額が4,500万円未満(建築一式工事は7,000万円未満ある場合や、自社で全てを請け負う場合は、「一般建設業の許可」で足ります。ただし、二次以降の下請に対する下請契約金額の制限はありません。また、あくまでも下請負人に対する保護の制度なので、元請として発注者から工事を請け負う際の請負代金の金額に制限はなく、自社が下請となる場合も特定建設業の許可は不要です。

なお、同一の業種について、一般建設業と特定建設業の両方の許可を受けることはできません。

(引用元:東京都建設業許可申請の手引きhttps://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/kensetsu/pdf/2023/R05_kensetu_tebiki_01.pdf

 

 なお、「公共工事」の場合は、発注者からの書面による承諾の如何に問わず、いかなる場合でも、一括して下請業者に工事を請け負わせてはいけません。

 

 

この記事では特に、特定建設業許可の専任技術者の要件について、以下に詳しく説明してまいります。

 

2.特定建設業許可の専任技術者の要件

 特定建設業の専任技術者についての要件は、建設業法第15条第1項第2号に規定されています。

 

(同法第15条第1項)

二 その営業所ごとに次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること。

 

以下、要件①から③のいずれかの要件に該当することが必要です。

 

要件①:国家資格者等

 

(同法第15条第1項第2号)

イ 第27条第1項の規定による技術検定その他の法令の規定による試験で許可を受けようとする建設業の種類に応じ国土交通大臣が定めるものに合格した者又は他の法令の規定による免許で許可を受けようとする建設業の種類に応じ国土交通大臣が定めるものを受けた者

(e-gov法令検索『建設業法』より抜粋:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000100_20240614_506AC0000000049&keyword=%E5%BB%BA%E8%A8%AD%E6%A5%AD%E6%B3%95

 

専任技術者の要件を国家資格で証明する場合において、一般建設業では、1級、2級と認められていたものが、特定建設業においては、1級の国家資格しか認められていないなど、一般建設業の専任技術者に比べて更に高度な知識や能力が要求されており、求められる資格の要件が厳しくなりますので、詳しくはこちらをご確認ください。

参考:国土交通省「建設業法における配置技術者となり得る国家資格等一覧」

    https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001619998.pdf

 

 

要件②:指導監督的実務経験を有する者

(同法第15条第1項第2号)

ロ 第7条第2号イ、ロ又はハに該当する者のうち、許可を受けようとする建設業に係る建設工事で、発注者から直接請け負い、その請負代金の額が政令で定める金額以上であるものに関し2年以上指導監督的な実務の経験を有する者

(e-gov法令検索『建設業法』より抜粋:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000100_20240614_506AC0000000049&keyword=%E5%BB%BA%E8%A8%AD%E6%A5%AD%E6%B3%95

 

一般建設業の要件 + 2年以上の指導監督的実務経験

まず、一般建設業の専任技術者の要件を満たしていることが前提であり、なおかつ、その上で、許可を受けようとする建設業に関して、元請として請負金額が4,500万円以上の工事について2年以上指導監督的な実務経験を有していることが必要です。

なお、後述する「指定建設業」の許可を受けようとする場合は、この②の要件に該当しても許可を取得することはできませんので、注意が必要です。

 

 「指導監督的実務経験」とは…

建設工事の設計、施工の全般にわたって工事現場の主任や現場監督者のような資格で、工事の技術面を総合的に指導監督した経験のことをいいます。

 

 

要件③:大臣特別認定者建設省告示第128号(1989年1月30日)の対象者)

(同法第15条第1項第2号)

ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者

(e-gov法令検索『建設業法』より抜粋:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000100_20240614_506AC0000000049&keyword=%E5%BB%BA%E8%A8%AD%E6%A5%AD%E6%B3%95

 

指定建設業7業種に関して、過去に特別認定講習を受け、当該講習の効果評定に合格した者若しくは国土交通大臣が定める考査に合格した者

ただし、特別認定講習及び考査については、指定建設業制度が導入された際に行われたものであり、現在は実施していません。

 (引用元:国土交通省HP『許可の要件 2.専任技術者』

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000082.html

 

 

 「指定建設業」とは・・・

施工技術の総合性、施工技術の普及状況、その他の事情等を勘案して定められた業種で、現在、次の7業種が「指定建設業」として定められています。(建設業法施令第5条の2)

 

1, 土木工事業

2, 建築工事業

3, 電気工事業

4, 管工事業

5, 鋼構造物工事業

6, 舗装工事業

7, 造園工事業

 

(同法第15条第1項 但書)

ただし、施工技術(設計図書に従つて建設工事を適正に実施するために必要な専門の知識及びその応用能力をいう。以下同じ。)の総合性、施工技術の普及状況その他の事情を考慮して政令で定める建設業(以下「指定建設業」という。)の許可を受けようとする者にあつては、その営業所ごとに置くべき専任の者は、イに該当する者又はハの規定により国土交通大臣がイに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者でなければならない。

(e-gov法令検索『建設業法』より抜粋:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000100_20240614_506AC0000000049&keyword=%E5%BB%BA%E8%A8%AD%E6%A5%AD%E6%B3%95

 

「指定建設業」については、施工技術の総合性等が考慮されることから、指定建設業の許可を取得しようとする場合に設置しなければならない専任技術者は、要件①の1級の国家資格や技術士等、または要件③の大臣特別認定者の要件を満たすことが必要です。つまり、指導監督的な実務経験のみでは、特定建設業の許可を取得することはできませんので注意が必要です。

 

 

 3.必要書類、確認資料

 それでは、具体的に、申請に必要な書類や添付資料とはいったいどのようなものなのでしょうか。以下では、東京都の場合の建設業新規許可申請に必要な書類を、「東京都建設業許可申請の手引き」p.49,58,59をもとにまとめました。

一般建設業許可の専任技術者につきましては前述いたしましたので(『一般建設業許可の専任技術者とは?経験や資格の要件等』)、ここでは特に、特定建設業許可の専任技術者について詳しく説明してまいります。

ただし、申請先の行政庁によって、提出方法や求められる資料が多少異なるので、適宜確認が必要になる場合がありますのでご注意ください。

 

 

 各営業所に専任技術者を置く場合、その全員について以下①及び②の資料がそれぞれ必要であることは、特定建設業許可の専任技術者についても同様です。

 

 

① 申請日現在での常勤性(及び専任性)を確認できる資料

 

:常勤性及び専任性を確認できる資料につきましては、一般建設業許可の専任技術者と同じですので、前述いたしました『一般建設業許可の専任技術者とは?経験や資格の要件等』でご確認いただき、ここでは説明を省略いたします。

 

 

技術者要件について確認できる資料

a. 技術者の要件が『国家資格者等』

その合格証明書・免許証等の写し

* 東京都建設業許可申請の手引きp.68,69「技術者の資格(資格・免許及びコード

番号表)」を参照ください。

https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/kensetsu/pdf/2023/R05_kensetu_tebiki_02_3.pdf

 

 

b. 技術者の要件が『監理技術者』

:監理技術者資格者証の写し

* 監理技術者資格者証により資格証明する業種については、他のa、c、dの証明書類(資格認定証明書、修業(卒業)証明書、実務経験証明書、指導監督的実務経験証明書等)の添付が不要になります。

監理技術者資格者証に添付が不要になる証明書類の記載がありますので、お持ちの資格者証をご確認ください。

 

(東京都建設業許可申請の手引きから抜粋:

https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/kensetsu/pdf/2023/R05_kensetu_tebiki_02_3.pdf

  この場合、以下の書類の添付が不要となります。

  ・1級施工管理技士の合格証明書の添付

  ・電気通信工事の実務経験証明書、指導監督的実務経験証明書等の添付

 

c. 技術者の要件が『大臣認定』

:その認定証の写し

 

『大臣認定』とは・・・

  常勤役員等(経営業務の管理責任者)、営業所専任技術者、請け負った建設工事につき主任技術者又は監理技術者を設置するにあたって必要な、一定の実務経験、学歴又は資格の要件は、原則として日本国内のものを前提に定められていますが、日本国内での実務経験、学歴又は資格のみでは所定の要件を満たさない場合であっても、外国での実務経験、学歴又は資格を加味することによって、要件を満たす者として取り扱うことができるようになるという制度です。この大臣認定の制度は、対象者は日本人、外国人を問わず、実務経験は日本企業、外国企業を問いません。

この場合、日本国内での実務経験等を前提とした管理責任者、技術者等と「同等以上の能力を有する」旨の国土交通大臣の認定を受けることとなります。

(引用元:国土交通省「建設業に関する外国での経験等を有する者の認定について(大臣認定)」

https://www.mlit.go.jp:8088/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk1_000115.html

 

 この認定証の交付を受けるためには、国土交通大臣に「認定申請書」と必要な

添付書類を提出して行います。詳しくはこちらをご確認ください。

・・・大臣認定申請の方法について

https://www.mlit.go.jp:8088/common/001423623.pdf

 

d. 技術者の要件が『指導監督的実務経験』

:その業種で指導監督的な実務経験を積んだことを証明する資料として、その技術者が、指導監督的な地位にあったことの分かる資料

 

特定建設業の専任技術者を実務経験で証明する場合は、一般建設業の専任技術者の要件を満たしていることが前提ですので、一般建設業の専任技術者を実務経験で証明する場合に必要となる資料は、前述いたしました『一般建設業許可の専任技術者とは?経験や資格の要件等 3. 必要書類、確認資料 d. 技術者の要件が『実務経験』を含む場合』でご確認ください。

  

指導監督的実務経験証明書(様式第十号)内容欄に記入した工事契約書写し及び施工体系図

* 指定建設業は、指導監督的な実務経験のみによる技術者要件の証明では、特定建設業の専任技術者とはなれません。

* 監理技術者資格者証をもって、本証明の添付が不要になります。

 

指導監督的な実務経験として認められるポイント

<工事について>

・発注者から直接工事を請負う工事(元請負)の場合のみ

工事経歴書上の主任技術者でなければならない

・請負代金の額が4,500万円以上(消費税込)であること

完成工事のみで、未成工事は認められない

・附帯工事は認められない

 

<期間について>

工期の合計が2年間(=24か月)以上必要

・工期が、対象となる請負代金の額の変更日付をまたがる場合でも、認められる

のはあくまでも請負代金の額の要件を満たす期間のみ

・複数の工事における工期の重複は認められない

・工期は片落ち計算する

・一般建設業の専任技術者要件部分で実務経験がある場合、指導監督的実務経験

と重複して算定可能

・「監理技術者資格者証」を取得している場合は、指導監督的実務経験証明書に

よる証明は不要。

 

(引用元:東京都建設業許可申請の手引き p.49,58,59

https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/kensetsu/pdf/2023/R05_kensetu_tebiki_01.pdf

 

 

 

4.行政書士への代行依頼

 以上、特定建設業許可の専任技術者を設置するために必要な、経験や資格の要件等を説明してまいりました。

上記のように、特定建設業許可の専任技術者に求められる経験や資格の要件は、一般建設業許可の専任技術者に求められる要件よりも更に厳しく、法令によって特別の資格や義務が課されております。

 また、特定建設業の許可を取得するためには、まず、下請けに出す下請契約の金額を検討したうえで、「専任技術者」に関する要件だけでなく、「財産的基礎等」の要件もクリアしなければならないので、特定建設業の許可を取得するのは容易ではありません。専任技術者が欠けた場合や、財産的基礎等の要件を満たさなくなった場合は、般特新規申請によって一般建設業許可を取得し直さなければならなくなり、余計な手間や労力、不要な費用がかかってしまいます。

この点、建設業法や施行規則、ガイドライン等に精通した専門的な行政書士に依頼し相談することによって、それぞれ一社一社の経営状況や組織体制に適した的確なアドバイスすることが可能です。

ぜひ、実績多数の経験豊富な谷島行政書士法人グループにお声がけください。

この記事の監修者

tanishima