「施主の都合で工期が動かせない」「竣工日が先に決まっている」──このような事情があっても、長時間労働(違法残業)を前提にした工期は、建設業法上「著しく短い工期」と判断され、請負契約の締結自体が禁止されます(建設業法19条の5)。
これは従来、施主などの「注文者」のみへの規制でしたが、この度契約締結をする元請も下請も等しく禁止されることになりました。
短工期で受注しても、後工程で無理が噴き出すと原価悪化・人繰り破綻・事故につながります。
本ページでは、建設業法の条文の趣旨と、実務で問題になりやすいポイント(違反になりやすいパターン、是正の手順、行政処分リスク)を、発注者・元請・下請いずれの立場でも理解できるように整理します。
その法令遵守体制の判定、その構築や、処分前後の対応は、谷島行政書士法人グループが得意としているところです。ぜひお声がけください。
内容
2.2025年改正で何が変わったか(受注者側の“工期ダンピング”も禁止へ)
パターンB:工程・条件の精査がなく「竣工日だけ先行」している
4.違反するとどうなる?(罰則より“勧告・公表・行政リスク”が現実的)
5.「適正工期」をどう判断する?(工期に関する基準の位置づけ)
「著しく短い工期」とは(定義の考え方)
建設業法は、発注者(注文者)に対し、
「通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約」を締結してはならない
と定めています(建設業法19条の5)。
ここで重要なのは、単に日数が短い=違反ではない点です。国交省の資料では、以下のとおりに整理されています。
- 「著しく短い工期」は “工期に関する基準”等に照らして不適正に短く設定された期間を指すつまり、「工程の根拠」や「施工条件」「週休2日・残業上限遵守」などを踏まえて見たときに、通常必要な期間を確保していない工期が問題になります。
2025年改正で何が変わったか(受注者側の“工期ダンピング”も禁止へ)
国土交通省は、改正のポイントとして、
「受注者の発意による著しく短い工期による請負契約の締結を禁止」
を明示しています。
従来は「発注者が無理な工期を押し付ける」局面が主に問題化していましたが、改正後は、例えば次のようなケースも注意が必要です。
- 受注者が受注獲得のために、本来必要な期間を削って“短工期でできます”と提示して契約してしまう(=工期ダンピング)
この場合も、結果として違法残業や安全・品質の問題につながりやすく、建設業法の趣旨に反します。
違反になりやすい典型パターン
パターンA:違法残業を前提にした工期
国交省の周知資料では、時間外労働の上限規制を上回る違法残業を前提に設定される工期は、たとえ合意があっても「著しく短い工期」と判断される、と明確に示されています。
※建設業も2024年4月から罰則付きの時間外労働上限規制が適用されています(働き方改革)。
パターンB:工程・条件の精査がなく「竣工日だけ先行」している
- 地中障害、資材納期、近隣調整、夜間・休日制限など
施工条件の検討が不十分なまま「この日までに終わらせて」と工期だけが固定されるケースは、後から突貫工事になりがちです。
工期の適正化は、中央建設業審議会の「工期に関する基準」に沿って検討することが前提とされています。
パターンC:契約変更でも“短工期化”してしまう
「著しく短い工期の禁止」は、当初契約だけでなく契約変更にも適用される旨が整理されています(周知資料・解説資料)。
違反するとどうなる?(罰則より“勧告・公表・行政リスク”が現実的)
建設業法は、著しく短い工期で契約した場合、行政(国交大臣・都道府県知事)が発注者に対して勧告し、従わない場合に公表できる枠組みを置いています(建設業法19条の6)。
また、発注者向けの周知資料でも、違反により勧告等の対象になり得ることが明記されています。
実務上は「罰金があるか」よりも、
公表・取引停止・元請としての説明責任・コンプラ監査対応など、レピュテーションと取引実務のダメージが大きい点に注意が必要です。
「適正工期」をどう判断する?(工期に関する基準の位置づけ)
国交省は、適正な工期設定のための拠り所として、中央建設業審議会の「工期に関する基準」を掲載・周知しています。
また2024年3月には、建設業の残業上限規制の本格適用を踏まえ、工期基準が改定され、その実施が勧告されています。
ポイント
- 「通常必要な期間」は、案件の規模・工法・現場条件・制約(夜間不可、搬入制限等)で変わります。
- したがって、“根拠ある工程(クリティカルパス)”を示した上で、週休2日と残業上限を織り込んだ期間を確保することが、最も安全な考え方です。
実務対応チェックリスト(発注者・元請・下請 共通)
- 施工条件(搬入、夜間、近隣、資材納期、許認可、検査日程)を洗い出す
- 工程表(根拠)を添付し、「通常必要な期間」の説明材料にする
- 残業上限規制を超える前提がないか確認(ここが最重要)
- 工期に影響する事象が発生した場合の協議・変更手続(書面化)
- 追加工事・仕様変更時の工期変更協議(“代金だけ変更”を防ぐ)
- 「基準・工程根拠・残業上限遵守の観点から、この工期では施工不能(または法令違反の恐れ)」と説明
- 代替案として、工程分割(部分引渡し)、仮設先行、仕様調整、工区分け、検査日の再設定などを提示
- “合意したからOK”にはならない(違法残業前提なら違反)
7.著しく短い工期かの判断フロー
以下の通りフローの分岐を経て、進められる参考として示します。
スタート
↓
【1】竣工日・引渡日が先に固定されている?
├─No → 次へ
└─Yes→ 次へ(要注意:日程先行は短工期化しやすい)
↓
【2】施工条件を洗い出した?
(資材納期/搬入制限/夜間休日制限/近隣調整/許認可/検査日程/天候リスク など)
├─No → 条件確定→工程再作成へ戻る
└─Yes→ 次へ
↓
【3】工程表(クリティカルパス)に「根拠」がある?
(工種の順序・人員計画・稼働日数・待ち時間・検査工程を含む)
├─No → 工程の根拠づけ→再見積へ
└─Yes→ 次へ
↓
【4】週休2日/残業上限等を守って完了できる?
(=違法残業を前提にしていないか)
├─No → 「著しく短い工期」リスク高
│ →【A】工期延長交渉 or【B】仕様調整/工区分割/部分引渡しへ
└─Yes→ 次へ
↓
【5】変更・追加工事が想定される?(仕様未確定/設計変更が起きやすい 等)
├─Yes→ 「変更時は工期協議・書面化」条項をセット
└─No → 次へ
↓
【結論】契約締結OK(根拠資料:条件整理+工程表+協議記録を保存)
よくある質問(Q&A)
Q1.発注者と受注者が合意していれば適法ですか?
A. いいえ。違法残業を前提にした工期は、合意があっても「著しく短い工期」と判断され得る、と周知資料で明示されています。
Q2.当初は適正でも、途中で遅れたので突貫で取り戻すのは?
A. 契約変更も含めて適正工期を確保する必要があります。「著しく短い工期の禁止」は契約変更にも適用される旨が整理されています。
Q3.どの資料を基準に判断すればよいですか?
A. 国交省が整理している「工期に関する基準」を参照し、案件条件に照らして工程根拠を作るのが基本です。
短い工期禁止等法令遵守は、谷島行政書士法人グループに相談
「この工期で契約してよいか」「是正の協議書面を作りたい」「元請として下請への“しわ寄せ”リスクを減らしたい」など、適正工期・契約リスクは、早い段階での整理が効果的です。
貴社の契約書・注文書・工程表を前提に、建設業法(工期ダンピング・契約適正化)の観点から、実務に落ちる形で整理します。
- 交渉・変更協議の文案作成(通知書/協議書/議事録)
- 契約条項の整備(工期変更・追加変更・リスク分担)
- 元下間のしわ寄せ防止の運用設計
この記事の監修者

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谷島行政書士法人グループCEO・特定行政書士外国人雇用・ビザの専門家として手続代理と顧問アドバイザリーを提供。ビザ・許認可など法規制クリアの実績は延1万件以上。
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- 資格等
特定行政書士、宅建士、アメリカMBA・TOEIC、中国語(HSK2級)他
- 略歴等
・札幌生まれ、仙台育ち、18歳から東京の大学へ進学。
・自身が10代から15種ほどの職種を経験したことから、事業のコンサルと経営に興味を持ち、その近道と考え行政書士受験、独学合格(合格率2.6%)。
・行政書士・司法書士合同事務所を経験後、大和ハウス工業㈱に入社。「泥くさい地域密着営業」を経験。
・独立し業務歴15年以上、マサチューセッツ州立大学MBA課程修了、現在に至る。
- 取引先、業務対応実績一部
・企業:外国上場企業などグローバル企業、建設など現場系の外国人雇用企業
・外国人個人:漫画家、芸能人(アイドルグループ、ハリウッドセレブ)、一般企業勤務者他
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