内容
「附帯工事」業種の判定より、「主たる工事」を判定すればよい… 3
高額な足場工事は「主たる工事」で、塗装や防水工事等は「附帯工事」か… 4
まとめ:主たる工事と附帯工事の業種判定は顧問行政書士チェックや相談… 5
「附帯工事」とは:「付帯工事」との違い
「附帯工事」とは、建設業法において、その許可業種がなくても、主たる工事に附帯する範囲で請負可能となる業種に係る工事のことをいいます。
一方で、「付帯工事」とは、建設業者からの見積もり等でつかわれます。こちらは業者が本体工事と別に出てくる工事を指すことが多いです。こちらは法令上の用語ではありません。したがって、厳密な定義もありません。
例えば、専用住宅を建てる工事では、以下があります。
1. 外構工事
2. 解体工事
3. 地盤改良工事
これらは通常建設業者の見積に入らないことがほとんどです。主に別発注してもよい工事を指すことが多いです。あくまで、本体工事と別とされるかどうかによって、トラブルを避けるために都度具体化すべき商取引の話です(建設業法においては「誠実性」に関する側面があります)。
建設業者にとって重要なのは「附帯工事」です。これを知らないと許可を維持できません。知らないリスクとして、主任技術者・監理技術者の配置義務違反や無許可、経験年数否定や、元請責任や下請発注義務違反の行政処分事由などが挙げられます。それを前提からわかりやすく説明してまいります。
建設業許可業種がないとできない原則
その建設業許可業種がないと、500万円以上(建築一式は1500万円以上)の工事の請負ができません。しかし、それは「主たる工事」についてです。
例えば、建築一式の許可を持っている一次下請は、住宅等の建築工事を請負うことができますが、各専門工事27の許可業種も必要であることが原則です。しかしそれがない場合、まったく関連工事を請負できないのでしょうか。この場合、以下の業種が必要と想定したとします。
1. 大工工事
2. 管工事
3. とび・土工工事
4. 解体工事
5. 電気工事
6. 内装仕上工事
7. 屋根工事
8. 防水工事
9. 塗装工事
許可業種がなくても可能な「附帯工事」の例外とは
まず、上記の建築一式業者が、大工工事、管工事やとび・土工工事業、解体工事など全ての許可業種を持っているとは限りません。建設業とは、各専門工事が広く存在するのです。
その想定により、建設業法第4条は、附帯工事で可能とする例外を法定しております。
建設業法
(附帯工事) 第四条 建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事を請け負う場合においては、当該建設工事に附帯する他の建設業に係る建設工事を請け負うことができる。 |
附帯工事の考え方は「主たる工事」と「従たる工事」に分けることが必須です。
つまり、「従たる工事」である附帯工事にあたれば請負はできるのです。
しかし、上記の専門工事を主たる工事として請負うことはもちろんできません。それは「附帯工事」でない場合、許可業種が必要となります。よく誤解される、「建築一式」があればすべてができるようなお話は、このように法律上、無許可となり否定されます。
【第4条関係】 附帯工事について 建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事のほか、当該建設工事に附帯する他の建設業に係る建設工事(以下「附帯工事」という。)をも請け負うことができるが、この附帯工事とは、主たる建設工事の施工により必要を生じた他の従たる建設工事又は主たる建設工事を施工するために生じた他の従たる建設工事であって、それ自体が独立の使用目的に供されるものではないものをいう。 附帯工事の具体的な判断に当たっては、建設工事の注文者の利便、建設工事の請負契約の慣行等を基準とし、当該建設工事の準備、実施、仕上げ等に当たり一連又は一体の工事として施工することが必要又は相当と認められるか否かを総合的に検討する。 |
出典:国土交通省、建設業許可事務ガイドラインhttps://www.cezaidan.or.jp/managing/about/condition/pdf/condition02.pdf
附帯工事となる金額
附帯工事には規制があり、また業種判断を間違えると、無許可になります。先ほどの「建築一式があればすべての工事ができる」という誤解も同様です。
請負契約ができても、専門技術者を配置する等の規制がありますし、そもそも主たる工事がその専門工事である場合まで請け負うことはできません。
ただし、500万円未満(税込み)の工事は「附帯工事」を検討しなくても主たる工事の考えのみで可能です。つまり、附帯工事の規制や概念を考えなくても良いです。そもそも軽微工事として、許可が不要だからです。附帯工事とは、許可業種が必要なときのための考えといってよいでしょう。
「附帯工事」業種の判定より、「主たる工事」を判定すればよい
附帯工事に含まれるかどうかの考え方は複雑で奥が深いものです。その考え方は、請負額が一番高い業種に限らないからです。
附帯工事なのかどうかは、その独立性、目的まで考えます。それは上記の国土交通省ガイドラインでも“附帯工事とは、主たる建設工事の施工により必要を生じた他の従たる建設工事又は主たる建設工事を施工するために生じた他の従たる建設工事であって、それ自体が独立の使用目的に供されるものではないもの”という運用方針が明示されております。
また、附帯工事は多数にわたります。すると、各業種の定義や例示を判断する能力や経験が必要となります。しかしそのやり方は迂遠です。
つまり、附帯工事を判定するのでなく、「主たる工事」を判定すれば多数の附帯工事を判定できます。
高額な足場工事は「主たる工事」で、塗装や防水工事等は「附帯工事」か
例えば、足場工事そのものはとび・土工工事業の許可となります。
そのとび・土工工事業の請負金額が300万円等で大きく、塗装工事等は200万円等の場合、客観的にとび・土工工事業が主たる工事となるならわかりやすいでしょう。
つまり、ここまでの結論は、下請であれば、とび・土工工事業に該当する足場組立や足場解体を依頼され、その工事を行う金額や目的から考える許可業種は、「とび・土工工事業」と考えてよいでしょう。
しかし、これは元請であれば結論が変わります。
元請の主たる工事と、下請の主たる工事の目的の違い
元請か下請かによって、主たる工事の判断がかわります。上記の塗装工事の例をみてみましょう。元請は、発注者の目的が外壁塗装である場合、その塗装を目的とすることが多いはずです。
そのついでに、屋根工事や防水工事に波及することはあるでしょう。その準備工事であるのが足場組立や足場解体である場合、「とび・土工工事業」は主たる工事といえるのでしょうか。つまり主観的な目的としては塗装工事が目的のはずです。
したがって、元請にとって「塗装工事業」が主たる工事となることで、「とび・土工工事業」は附帯工事となるのです。この場合、下請の請負金額が500万円以上となるとび・土工工事業や防水工事などがあれば、それらは附帯工事として請負可能です。しかし技術者の要件が必要です。
「専門技術者」配置は、附帯工事を自社で施工する場合
上記の例では、主たる工事でない業種を下請に出さない場合、それぞれ「とび・土工工事業」、「防水工事業」の専門技術者が必須となります。「専門技術者」は、その附帯工事の業種において主任技術者と同様の要件を有する技術者です。
ただし、下請が許可業者であれば、主任技術者又は監理技術者を配置することになります。
ちなみに、無許可業者への下請契約は行政処分をうけます。これは施工体制台帳からみてわかりやすい違反といえるでしょう。
結論、全ての工事の業種判定が必須
上記の通り、元請であっても下請であっても、工事業種の判定は必須です。元請が「我々が判断した」とかばって罰せられても、下請が救われることもありません。
「主たる工事」の判定ミスがあると、例えば、以下の状況が引き起こされます。
- その業種がないために、無許可の請負工事
- 監理技術者の資格が異なるため無資格者
- 主任技術者の資格が異なるため無資格者
- 1と2の技術者資格がないための専任現場違反
- 公共工事参入の停止
- 業種追加申請時、その業種の技術者経験年数否定
- 監理技術者証交付申請時、その業種の技術者経験年数否定
- 無許可下請業者への発注による営業停止
「附帯工事」のミスの場合でも、以下の重大違反につながります。
1.専門技術者配置義務違反
2.下請の主任技術者等配置義務違反
3.下請が無許可業種となる刑罰
まとめ:主たる工事と附帯工事の業種判定は顧問行政書士チェックや相談
業種判定の誤りによって、監理技術者無資格や無許可、経験年数否定や、元請・下請処分事由であるだけでも重大です。
しかも、それは自社のみならず、他社も多くまきこみます。
以上の重要な違反により、建設業許可を維持できなくなることは致命的です。
専門の行政書士法人などに顧問契約でチェックを依頼していれば安全です。さらにプロジェクトとして業種判定を内製化資料構築もしつつ、受注前に通常と異なる工事は相談しましょう。
谷島行政書士法人グループでは、前職がハウスメーカーである代表行政書士が工程会議に出席、又は事前打ち合わせなどの実績もあります。
専門の行政書士がいない場合は、ぜひお声がけください。
この記事の監修者
