この記事では、主任技術者・監理技術者について、よく誤りや違反が散見されるケースを中心に、以下のとおり詳しく説明してまいります。

 

Name 形式 お勧めしたい層 キーワード・タグ(大区分,中区分)
主任技術者・監理技術者とは? 2024年改正及び取締り・処分対応 制度解説 #経営者 #法務部 #コンプライアンス #建設業許可 #常勤役員等 #主任技術者 #監理技術者 #配置技術者 #専任技術者 #現場専任

 

Q. 主任技術者・監理技術者とはなんですか?

 

A. 建設業許可業者は、一定の資格や経験を有する技術者を、現場に配置する義務があります。この「配置技術者」によって施工の質が保たれます。
ではどのような経験や資格が必要でしょうか。
また、どのようなきっかけで義務違反が発覚し、処分や指導がされるのでしょうか。
以下の詳細を説明してまいります。

 

配置技術者:主任技術者・監理技術者とは

主任技術者も監理技術者も、「配置技術者」の類型ですが、請け負う工事の金額によって必要な配置技術者が異なります。つまり建設業許可業者は、必ず2つのいずれかを現場毎に設置します(これは専門技術者を配置しても同様です。専門技術者は、おって説明させていただきます)。

 

主任技術者

下請としては主にその業種に必要な「主任技術者」を設置することになります。この点、実は建設業許可を持っていない場合は、設置する必要がありません。

ただし、元請の現場から下請として入れるかどうか、つまり排除される基準が、建設業許可を持っていることである工事も多くあります。したがって建設業許可をとって、それを維持するための「主任技術者」などの規制コンプライアンス対応は最低限の必要事項と考えられます。

 

監理技術者

「監理技術者」が必須の配置となる現場の基準は、4,500万円以上の下請工事額を出す元請の場合です。つまり、下請やそれ未満は「主任技術者」で足りることになります。

 

専門技術者という類型

まず、工事業種の規制としては、主たる工事と「一連又は一体」である附帯工事(付帯工事)は建設業許可の業種をすべて取っていなくても施工可能です。

しかし、この附帯工事を行う場合、配置義務があるのは、専門技術者という技術者となります。この点、必ず元請で用意する必要はありません。つまりその業種を下請で配置すれば可能となります。この点、下請が許可業者である場合、主任技術者を配置することになります。

 

専門技術者の業種ごとの資格

専門技術者の資格や経験の要件は、主任技術者も監理技術者と概ね同じです。

 

附帯工事の業種判定が必要な理由

上記から、附帯工事を行う場合、業種の判定が重要です。なぜなら、附帯工事についても、その業種ごとに要件を満たす専門技術者または主任技術者が必要となるからです。これは主たる工事との金額だけでなく、具体的な注文書や工事ごとに判断する必要があります。それで、頻繁に起きる工事は、企業ごとに内製化できるマニュアルを作成すべきと考えます。

 

 

主任技術者・監理技術者の業種ごとの資格

主任技術者も監理技術者も、専任技術者要件と概ね同じです。

配置技術者として現場に配置される技術者の要件として、実務経験や資格による違いから類型として分けられます。

基本的に、主任技術者は、金額が低い工事で配置される技術者です。特定建設業の専任技術者要件が監理技術者の要件に相当します。それもあってか、下請額4,500万円以上の場合、現場に「監理技術者」が必要で、企業として「特定建設業許可」も必要となります。

したがって、その業種における国家資格が基本となりますが、監理技術者における指定建設業、つまり一部の業種を除き実務経験でも可能です。それらを証明する資料を備え、立入検査や行政指導に備えることになります。

 

下請額又は請負額における分類およびまとめ

配置技術者として、主任技術者でよい工事かどうか、さらに主任技術者又は監理技術者の専任を要する工事かどうか(現場に配置技術者の専任が必要な現場)を以下にまとめました。

改正項目 建築一式以外の金額(税込) 建築一式の金額(税込)
監理技術者配置現場および

特定建設業許可の基準である下請額

4000万円以上

4500万円以上

6000万円以上

7000万円以上

現場専任:

請負代金額の下限(主任技術者または監理技術者の専任を要する場合)

3500万円以上

4000万円以上

7000万円以上

8000万円以上

特定専門工事の下請代金額の上限(主任技術者の配置不要の例外:大工の内、型枠) 3500万円まで

4000万円

特定専門工事のみのため、無

 

 

主任技術者・監理技術者等の違反に係る取締り方法

1. 行政庁に毎年提出する建設業の決算報告

この業種や技術者の判定に誤りがあれば、行政庁から指導されます。そこから処分に発展することがあります。

 

2. 下請とのトラブル等からの通報

現場が丸投げされた場合はもちろんですが、専門技術者がいない場合、その他配置技術者がいない場合も下請業者から当然またはなんとなくわかることです。例えば、建設業法における下請への支払義務規定違反などのトラブルが端緒となることがあります。特定建設業許可はもちろん、一般建設業許可業者であっても、義務違反は随時生じるため、そこから通報をされる場合や行政庁への相談がきっかけとなり、行政指導がされます。そうすると、下請にヒアリングがされ、配置技術者その他の違反に関しても発覚してしまうのです。

 

3. 上記及びその他違反からの指導や文書提出からの発覚

上記から違反があればもちろん、その他の違反があれば、行政に対する改善報告を提出します。その対応いかんによっては、他の違反事実が発覚するため、現場の帳簿などから配置技術者違反などが発覚することもあります。場合によっては、複数違反が見つかると「処分の加重」とされ、長期の営業停止などの行政処分に発展します。

 

参考:行政処分の加重とは?

複数の不正行為等が一つの営業停止処分事由に2回以上該当するとき、当該処分事由に係る処分基準として、営業停止等の期間を1.5倍に加重した上で、当該加重後の基準に従い、営業停止処分を行うこと

国土交通省「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」(最終改正 令和5年3月3日国不建第578号)を元に解釈

 

配置技術者(主任技術者・監理技術者)の法令根拠および解釈

現場配置技術者(主任技術者・監理技術者)

(建設業法第26条及び同法第26条の3,4)

 

① 主任技術者・監理技術者(監理技術者等)とは?

建設業の許可を受けている者は、建設工事の適正な施工を確保するために、請け負った建設工事を施工する工事現場に、当該建設工事について一定の資格を有する者(主任技術者又は監理技術者。以下「監理技術者等」という。)を置いて工事の施工の技術上の管理を行う必要があります。(同法第26条の4)

 

建設工事の適正な施工の確保

建設業は、建設生産物の特性及び施工の特性を踏まえ、建設業者の施工能力が特に重要であり、建設業者が組織として有する技術力と技術者が個人として有する技術力が相俟って発揮されることにより、適正かつ生産性の高い施工が確保される。このためには、高い技術力を有する技術者工事現場毎に配置することが必要である。

 

建設産業の健全な発展

技術者が適正に設置されていないこと等による不良施工の排除や、一括下請

負などの不正行為を建設市場から排除することにより、技術と経営に優れ、発注者から信頼される企業が成長できるような条件整備を行う。

 

主任技術者(法第26条第1項)

建設業の許可を受けたものが、その請け負った建設工事を施工するときは元請・下請、請負金額に係わらず、工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(主任技術者)を設置しなければなりません。

 

監理技術者(法第26条第2項)

発注者から直接請け負った建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額の合計が4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上になる場合は、主任技術者ではなく監理技術者を設置しなければなりません。

 

 

② 技術者の要件

主任技術者

[1] 建設業法施行規則第1条で規定する学科(指定学科)卒業

□ 大学(指定学科)卒業後3年以上の実務経験

□ 高校(指定学科)卒業後5年以上の実務経験

 

[2] 10年以上の実務経験

 

[3] 一級、二級国家資格者

例:1級施工管理技士、1級建築士、技術士、2級施工管理技士等

 

 

監理技術者

[1] 一級国家資格者

例:1級施工管理技士、1級建築士、技術士

 

[2] 実務経験者(指定建設業は除く)

主任技術者としての要件(右記の主任技術者としての実務経験)を満たす者のうち、元請として4,500万円以上の工事に関し2年以上の指導監督的な実務経験を有する者

 

[3] 国土交通大臣特別認定者

技術者に求められる要件は、監理技術者は特定建設業の営業所専任技術者と、主任技術者は一般建設業の営業所専任技術者と同じになります。(上記「2. 専任技術者の要件」参照)

 

引用元:国土交通省「技術者制度の概要」スライドp.3~p.7

https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001715123.pdf

 

 

配置技術者が現場で非専任の工事なら、営業所の専任技術者との兼務は可能か?

結論は、原則不可能となります。営業所の専任技術者は営業所毎に専任が義務付けられているからです。

ただし、例外的に可能な場合があります。専任現場でない場合は、近接している時が可能な基準となります。

この点、判例においては考え方が示され、行政においても平成26年2月からの運用として、現場と営業所が直線距離10km以内である場合、可能とされております(それ以前は5km以内とされておりました)。

 

配置技術者との兼務の可否の法令根拠及び解釈

以下の通り、国土交通大臣の運用について基準があるため、根拠を示します。

 

現場配置技術者(主任技術者・監理技術者)との兼務

(建設業法第26条及び同法第26条の3,4)

 

③ 営業所専任技術者と監理技術者等との関係

『営業所「専任」技術者』における「専任」とは、営業所に常勤して専らその職務に従事することが求められています。

「営業所」とは、本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事

務所をいう。

「常時請負契約を締結する事務所」とは、請負契約の見積り、入札、狭義の契約締結等請負契約の締結に係る実体的な行為を行う事務所をいい、契約書の名義人が当該事務所を代表する者であるか否かを問わない。(建設業許可事務ガイドライン)

 

『現場配置「専任」技術者』における「専任」とは、他の工事現場に係る職務を兼務せず常時継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事していることが求められています。(その制度運用については、『監理技術者制度運用マニュアル』において規定)

 

(法第26条第3項)

公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で政令により定めるものについては、前二項の規定により置かなければならない主任技術者又は監理技術者は、工事現場ごとに、専任の者でなければならない。

 

現場専任制度については、元請、下請けに関係なく適用となります。

専任の監理技術者については、監理技術者資格者証の交付を受け、監理技術者

講習を受講していることが求められます。

 

特例として、専任の監理技術者等であっても、下記の要件を全て満たす場合は、営業所専任技術者は、当該工事の専任を要しない監理技術者等となることができます。

当該営業所において請負契約が締結された建設工事であること

工事現場と営業所が近接し、当該営業所との間で常時連絡を取りうる体制にあ

ること

③所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること

④当該工事の専任を要しない監理技術者等であること

引用元:国土交通省「技術者制度の概要」スライドp.3~p.7

https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001715123.pdf

 

上記②の特例は、すなわち工事現場の職務に従事しながら実質的に営業所の職務にも従事できる程度とされます。

 

 

建設業のコンプライアンスと監督処分の特殊性

上記のように、建設業の許可の維持のために、配置技術者の区分である主任技術者と監理技術者の制度やコンプライアンスを説明してまいりました。

コンプライアンスは大変労力を必要としますが、事業の存続を左右することや、外国人雇用も不可能となることを考えると、それだけ価値があることです。

さらに、国土交通大臣や東京都その他道府県知事によっても管轄の現場における運用や指導の厳しさが異なります。

ちなみに、建設業方がとても特殊なのは、建設業許可を持っていない都道府県においても、建設業者に監督処分が可能です。

その他、下請も含めて、許認可がない状態でも罰則がある規定にも注意が必要です。

 

行政書士への依頼によるメリットとまとめ

建設業法や施行規則、その他の基準は、改正も頻繁です。したがって、これらに精通した専門的な行政書士に依頼し、継続的なチェックや相談をして体制整備をすることが重要です。結果、コストパフォーマンスもよく、的確に許可の維持を可能とします。

谷島行政書士法人グループでは、継続的な業種のチェックや、附帯工事における専門技術者、配置技術者から立入検査および行政処分の対応まで幅広くできます。

建設業許可の維持の価値はもちろん、昨今ではステークホルダーへのコンプライアンス管理は最重要の課題です。ぜひ専門家をご活用ください。

 

この記事の監修者

tanishima