この記事では、常勤役員等(経営業務の管理責任者)について、以下に詳細を説明してまいります。
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常勤役員等(経営業務の管理責任者)とは?要件と申請書類 | 制度解説 | #経営者 #法務部 | #建設業許可 #コンプライアンス #常勤役員等 #経営業務管理責任者 #経管 #経営経験 |
Q. 建設業の許可要件の一つである、常勤役員等(経営業務の管理責任者)とはなんですか?
1.常勤役員等・経営業務の管理責任者の制度概要
主として常勤の取締役などが建設業における経営経験を備えていることを建設業許可の要件として定められているものです。このような常勤役員である経営業務の管理責任者(以下、「経管」とします。)としての候補者その他常勤役員等又は直接補佐者(財務管理、労務管理、業務運営の部署所属かつそれらいずれかの経験者)がいないと、建設業許可を取得または維持することはできません。
常勤役員等・経営業務の管理責任者のポイント
また、経営経験については、通常5年以上、最低でも2年以上の建設業に関する役員等経験が必要です。
建設業は一つの工事ごとのオーダーメイドであり、その経験や技術その他の能力や体制、資金状況ごとに適切な施工を行うことができるかどうかが重要だからです。
なお、専任技術者のように国家資格等による経験立証の免除はありません。
経営業務の管理責任者に関する建設業法の趣旨
建設業は「一品ごとの注文生産であり、一つの工事の受注ごとにその工事の内容に応じて資金の調達、資材の購入、技術者及び労働者の配置、下請負人の選定及び下請契約の締結を行わなければならず、また工事の目的物の完成まで、その内容に応じた施工管理を適切に行うことが必要であるといった、他の産業と異なる建設業の特性を踏まえ、企業の安定的な経営を図る観点から」必要とされております(引用元:国土交通省 https://www.mlit.go.jp/common/001173625.pdf)。
このことから、建設業法では、「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力(法第7条第1号)」として、「建設業に係る経営業務の管理責任者(常勤役員等)を置くこと又は建設業に関する経営体制を備えること」を、許可要件の一つに規定しております。
2.常勤役員等(経営業務の管理責任者)の範囲とは?
「常勤役員等(経管)」とは、法人である場合においてはその役員のうち常勤であるもの、個人である場合にはその者又はその支配人をいい、「役員」とは、業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいいます。
これらに準ずる者とは、執行役員、監査役、会計参与、監事及び事務局長等は原則含みません。しかし、取締役会設置会社において 、建設業の経営業務の執行に関し、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受けた執行役員等は含まれます。
役員以外の経験については、上記の執行役員の他、個人事業主でも可能です。
さらに、直接補佐者の例外規定を検討することで、上記経管候補がいない場合でも、申請企業において5年以上、次の部署にいたことを証明することで、可能性があります。
① 財務管理
② 労務管理
③ 業務運営
これらのいずれかの部署に5年以上所属した経験を持つ者を補佐者として、また、次の役員を配置することで、建設業許可の経管の要件を満たす可能性があります。詳しくはご相談ください。
経管候補の役員の要件:
① 経験年数:2年以上の経営経験
② 経験内容:建設業に関するもの
3.必要書類、確認資料
東京都の場合の建設業新規許可申請に必要な書類を以下に説明してまいります。
常勤役員等(経管)及び直接補佐者を置く場合は、その全員について以下①~③の確認資料がそれぞれ必要です。
① 申請日現在での常勤性を確認できる資料
「常勤性」とは、原則として主たる営業所において、一定の計画の下に毎日所定の時間中、その職務に従事していることをいいます。
なお、通常、休日その他勤務を要しない日を除いて勤務が必要であり、他社に常勤している者や常識的に通勤不可能な者等は含まれません。
≪個人≫他の事業者の社会保険へ加入していないことの証明として以下2つ
・健康保険証の写し(氏名、生年月日のわかる有効期限以内のもの)
・直近決算の個人確定申告書の写し(第一表、第二表、受信通知(メール詳細))
≪法人≫申請会社における社会保険への加入していることの証明
・健康保険証の写し(氏名、生年月日、事業所名の分かる有効期限以内のもの)
⇒健康保険証に事業所名が印字されていない場合は、申請者の所属を証明するため、健康保険証の写し及び以下のいずれかの資料
・健康保険・厚生年金被保険者に関する標準報酬決定通知書の写し
・資格取得確認及び標準報酬決定通知書の写し
・住民税特別徴収税額通知書(徴収義務者用)の写し
・(新規に認定する者に限り)特別徴収切替届出(受付印のあるもの)の写し
・直近決算の法人用確定申告書の写し(表紙、役員報酬明細、受信通知(メール詳細)
→申請会社において役員として一定額の役員報酬を得ていることの証明)
・厚生年金の被保険者記録照会回答票の写し
・(新規に認定する者に限り)資格取得届(受付印のあるもの)やその通知の写し
・健康保険組合等による資格証明書(申請会社への在籍を証明するものの原本)
<「常勤性」が認められない場合>
・被扶養者 →常勤性が推定できないため ・申請事業者以外からの報酬がある場合 ・住所が勤務を要する営業所の所在地から著しく遠距離(通勤時間がおおむね片道2時間以上)にあり、常識上通勤不可能な者 →通勤確認のできる資料(通勤定期券や ETC 記録等)が必要。 ・他に個人営業を行っている者 ・建設業の他社の技術者、常勤役員等(経管)及び直接補佐者や、他社の常勤役員、代表取締役、清算人等(その会社において、事務一般を掌理する常勤の取締役がいる旨の証明書の提出がある場合を除く。) ・他の法令により専任性を要するとされる管理建築士、宅地建物取引士(同一法人で同一の営業所である場合には、例外的に可能) |
出向者の場合は、出向契約書・発令通知書等で該当者、出向元・出向先・出向期間の確認できる資料、又は該当者の氏名が記載された、申請時点における3か月分の出向負担料に関する出向元・出向先間の請求書及び入金資料等の資料が必要。
* 健康保険証については、保険者番号及び被保険者記号・番号は、見えないように消した(隠した)ものを提出。
② 申請日現在において常勤役員等(経管)及び直接補佐者の地位にあることを示す資料
<常勤役員等(経管)>
申請時点において、法人にあっては役員又は権限を委譲された執行役員等、個人にあっては事業主又は支配人である必要があります。
≪法人≫・役員であることを示す発行日が3か月以内の登記事項証明書
→「役員に関する事項」の分かる履歴事項証明書等
・権限委譲を受けた執行役員等であることを示す資料
→取締役会の議事録、組織図等 のいずれか
≪個人≫・他の事業者に在籍せず、事業主であったことを示す資料
→個人確定申告書の写し(第一表、第二表、受信通知(メール詳細))
・支配人である場合は、そのことを示す登記事項証明書
→履歴事項証明書等 のいずれか
<直接補佐者>
申請時点において、常勤役員等(経管)(ロ該当)に直属の者である必要があります。
→組織図等
③ 経営等の経験について確認できる資料
建設業の経営又はその補助、及び業務経験の確認に当たっては、それぞれの期間分の経験年数を積み重ねていることと、その期間が建設業に関して証明すべきものである場合、当該期間において、事業者として建設業の経営業務を管理していたことを証明する必要があります。
α, 過去の経験年数を証明するものとして、証明期間分の以下の書類
<常勤役員等(経管)>規則第7条第1号イ(1):建設業に関し5年以上、役員であったことを示す登記事項証明書 →「役員に関する事項」の分かる履歴事項証明書等
≪個人≫他の事業者に在籍せず、事業主であったことを示す資料 →個人確定申告書の写し(第一表、第二表、受信通知(メール詳細))
≪令3条の使用人≫5年以上その地位にあったことを示す、経験会社での建設業許可申請書や変更届出書の写し等
規則第7条第1号イ(2):建設業に関し5年以上、取締役会設置会社において、取締役会の決議により権限委譲を受けた執行役員等であったことを示す資料 →取締役会の議事録、組織図等
規則第7条第1号イ(3):建設業に関し6年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位にあったことを示す資料 →組織図、業務分掌規程、人事発令書等
規則第7条第1号ロ(1):建設業に関し2年以上、役員又は権限を委任された執行役員等であったことを示す資料 →イ(1)(2)と同様 + この期間と合わせて5年以上となるように、 建設業に関して役員又は役員等に次ぐ職制上の地位(財務管理・労務管理・業務 運営のいずれかについて)にあったことを示す資料 →組織図、社員名簿、略歴書、この期間の常勤性を示す①の資料等
規則第7条第1号ロ(2):建設業に関し2年以上、かつこの期間と合わせて5年以上となるように、役員又は権限を委任された執行役員等であったことを示す資料 ≪個人≫他の事業者に在籍せず、事業主であったことを示す資料
<直接補佐者>≪法人≫建設業に関し5年以上、申請会社(吸収合併等により、過去に所属していた会社と申請会社の間で経営上の連続性があると認められる場合に限り、消滅会社での経験を足すことは可)において、財務管理・労務管理・業務運営に携わる部署に在籍し、業務経験を積んだことを示す資料(職層は問わない。) →組織図、社員名簿、略歴書、この期間の常勤性を示す①の資料等 ≪個人≫その建設業者等の下の専従者又は給与者として、建設業において 財務管理・労務管理・業務運営に携わっていたことを示す資料 →事業主の青色申告書、略歴書、この期間の常勤性を示す①の資料等
β, 証明期間において、建設業を経営していたことを証明する資料 αの資料は、常勤役員等(経管)及び直接補佐者が、証明する者における在籍を示す資料であり、この期間、証明者おいて、実際に建設業の経営又は補助をしていたことが分かる資料が必要です。
<証明期間において、建設業許可を有していた場合> →建設業許可通知書又は受付印の押印された建設業許可申請書、変更届出書、廃業届等の写し *東京都知事許可の場合は、許可番号及びその許可期間について申請書様式七号又は七号の二の備考欄に記入することで、上記資料を省略可能(ただし、令3条の使用人の期間については、申請書・変更届出書等の裏付け資料は省略不可)。
<証明期間において、建設業許可を有していなかった場合> →期間通年分の建設業に関する工事請負契約書、工事請書・注文書又は請求書等の写し等 *請求書、押印のない工事請書・注文書等については、入金が確認できる資料(通帳の写し等)の提出が必要(電子契約である場合を除く)。
<大臣認定の場合> →認定証の写し
*過去いずれかの建設業許可で、経営業務の管理責任者又は常勤役員等(経管)として認められた者は、当該事実が確認できる資料(許可行政庁において受付印の押印された建設業許可申請書(様式第一号)又は変更届出書(第一面)(様式第二十二号の二)及びこれらに添付された様式第七号等の写し)をα、βの書類に代えることができます。(2020年9月30日以前の旧イ・ロ該当者は、2020年10月1日以降の新イ(1)該当者となる。) *ただし、新ロ該当者であった元経管経験をそのまま後日新イ該当者経験とすることはできません。
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東京都建設業許可申請の手引きから抜粋:https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/kensetsu/pdf/2023/R05_kensetu_tebiki_01.pdf
4.行政書士への代行依頼
上記のように、建設業の許可要件の一つである、「常勤役員等(経営業務の管理責任者)」の証明に必要な書類や確認資料は、複雑多岐にわたり、その資料の選定や収集には大変労力を必要とします。国土交通大臣許可や他の道府県知事許可によっても提出方法が微妙に異なるため、適宜提出先の行政庁が指定する提出方法の確認が必要となります。
また、直近では、2020年10月の法改正にともない、常勤役員等(経管)の取り扱いも改正の前と後で異なるため、その確認は困難です。
この点、専門家である行政書士に建設業許可申請の代理代行を依頼することができます。建設業法や施行規則に精通した専門的な行政書士に依頼し相談することが、コストパフォーマンスもよく、的確かつ迅速に許可の取得を可能とします。ぜひ谷島行政書士法人グループにお声がけください。
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