会社法のポイント
具体的な設立方法の前に、会社法施行による規制緩和を確認しておく必要があります。
うっかり改正前の規制に基づいて設立して損をしたということがないようにしなければなりません。
最低資本金制度の撤廃(法27条4号)
株式会社は資本金として、最低1000万円を計上する義務がありましたが、これが撤廃され、資本金1円でも設立可能となりました。
なお、2003年から時限立法として、いわゆる1円設立会社などの「確認株式会社」制度がありました。この制度を適用していた会社は、5年以内に1000万円を集めなければ、解散または組織変更しなければなりませんでした。
しかし、必要な時期に定款変更等をおこなうことで、従来どおりの商号で事業継続ができるようになりました。
設立手続きの迅速・簡素化
1人会社(取締役1人のみで、監査役等不要の形態)や、いわゆるオーナー経営の会社(所有と経営が同一人である小規模会社)をスピーディーに設立できるようになりました。
例えば、発起設立の場合は、銀行等の払込保管証明書を、必ずしも必要でなくなりました(法34条②)。
類似商号(会社名称)規制の簡素化
同一商号が同一住所にない限り、登記可能になりました。
従来は同一市町村内においては、同一のみならず類似の商号までも、同一営業においては登記できないとされていたため、審査が必要でした。
しかし、以下のように大幅に簡素化されました。
改正法:商号の登記は、他人の登記した商号と同一であり、かつ、その営業所が他人の商号に係る所在地と同一であるときは、することができない(新商業登記法27条)。
これは、他人がすでに登記している商号であっても、まったく同じ所在地でなければ商号として使うことが可能になったことを意味します。
例:東京都新宿区新宿1丁目1-1において、「㈱サトウ商事」がすでに登記されている場合であっても、その隣のビル(所在地:新宿1丁目1-2)で「㈱サトウ商事」を登記することができる。
ただし、登記所はそれでとおっても、トラブルの元となるケースがあります。以下2つの例を示します。↓
①「何人も、不正の目的をもって、他の会社と誤認されるおそれのある名称または商号を使用してはならない。(法8条1項)」
上記の違反により、営業利益を侵害されるおそれのある会社は、その保全のために侵害の停止と予防を請求することができます(同条2項)。
②また、他人の商号と類似の商号を使用し、混同を生じさせる行為は、不正競争にあたる(不正競争防止法2条)場合があり、これに対しては商号差し止め請求と損害賠償請求(同法3条・4条)が認められています。
したがって、類似商号規制が大幅に緩和されたといっても、商号の選定には場所等を勘案した上でのリスク管理は最低限必要です。
有限会社法の廃止
有限会社のメリットは、会社法上のいわゆる「譲渡制限会社」におおすじ引き継がれました(例:監査役、取締役会不要。役員任期の伸長規定など)。そして、有限会社は原則として、株式会社の規定がおおすじ準用されるものとして存続できます。
以後、有限会社は商号としては残りますが、小規模な会社とみられるデメリット、バラエティに富んだ機関設計をおこないたい、信用力を向上させたいなどの場合は、株式会社への移行手続きをとることで、名実ともに株式会社となります。
設立費用・スケジュール
次項では、これらを踏まえた設立を考えるための費用と期間についてご説明いたします。
⇒【設立費用・スケジュール】
・設立の費用・期間・スケジュール等のポイント