内容

  1. 我々A社は、機械器具設置工事業の許可を持っています。機器の撤去工事は、監理技術者・主任技術者の実務経験になりますか?… 1

A1. パターン1は「機械器具設置工事」として実務経験として可能性が高い… 1

「附帯工事」となる場合、経験年数が否定されるリスクへの対応… 2

A2. パターン2の撤去のみは、工事の実態によって機械器具設置工事が「主たる工事」とならないことも… 2

まとめと行政書士の見解… 3

 

Q. 我々A社は、機械器具設置工事業の許可を持っています。機器の撤去工事は、監理技術者・主任技術者の実務経験になりますか?

  • パターン1: 撤去工事の後に、そのまま新しい機器の据付工事を行う。
  • パターン2: その現場では撤去工事のみで、据付工事は行わない。

なお、主任技術者の経験にならない場合、営業所の専任技術者の実務経験年数でも否定されるため、許可の維持や業種追加でも重要です。

A1. 撤去後の据付は「機械器具設置工事」として実務経験として可能性が高い

「機器の撤去工事」の経験がどの業種に該当するかは、実務上でも判断が分かれやすい重要なポイントです。以下に、最新の法令解釈に基づき解説いたします。

パターン1:撤去工事の後に、そのまま据付工事に移行する場合

結論として、このケースの経験は機械器具設置工事の実務経験として認められます。

  • 主たる工事: 機械器具設置工事
  • 工事内容: 既存機器の撤去(準備工事)+ 新規機器の組立を伴う据付(本体工事)

このように、契約上一連の工事として請け負い、かつ、同一の許可業種の範囲内で行われる準備から完成までの一連の作業は、その許可業種の工事として扱われます。

したがって、撤去作業の期間も含め、機械器具設置工事と解釈できる場合、工事全体が監理技術者・主任技術者の実務経験の対象となります。

なお、前提条件として、以下が必要です。

1.据付工事とは、組立等を伴うことで機械器具設置工事となること

2.電気工事・管工事等その他の許可業種に該当しない機械器具設置工事となること

機械器具設置工事そのものの判定が必要な場合、その前段階からご相談が必要です。

 

「附帯工事」となる場合、経験年数が否定されるリスクへの対応

この場合の撤去工事は「附帯工事」というよりも、新しい機器を据え付けるという主たる目的を達成するための一連の準備行為であり、全体が一個の「機械器具設置工事」と解釈するのが最も適切です。

建設業法でいう「附帯工事」とは、主たる建設工事を施工するために必要となる他の業種の建設工事を指します(例:管工事(主)に伴う、軽微な内装仕上工事(従))。

今回のケースは、同一業種内の一連の行為であるため、撤去自体も主たる工事と評価でき、附帯工事とは異なります。

ちなみに、慣習としては「付帯工事」の見積もりに入るかもしれませんが、これは法令上の「附帯工事」ではありません。

 

 

A2. 撤去とは解体又は運搬かによって機械器具設置工事が「主たる工事」とならないことも

この場合は、工事の実態によって判断が分かれるため、慎重な検討が必要です。 考えられる解釈は、主に以下の2つです。

解釈①:「機械器具設置工事」に該当するケースは「解体」等

国土交通省関東地方整備局の「建設業許可の手引き」には、「機械器具設置工事で設置された機械のみを解体する工事」は「機械器具設置工事」と解釈されています。この解釈に基づけば、工事の主たる作業が、設置された機械を分解する作業である場合、単独の工事であっても「機械器具設置工事」と判断され、その経験は実務経験として認められる可能性があります。

【参照資料】

解釈②:「とび・土工工事業」等に該当するケースは「運搬」等

一方、国土交通省本省が示す建設工事の例示では、「とび・土工・コンクリート工事」の内容として「機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置」が挙げられています。 もし、工事の主たる作業が解体や分解よりも、クレーン等による重量物の移動や搬出である場合、こちらの解釈が適用され、「とび・土工工事業」等と判断される可能性があります。この場合、機械器具設置工事業の実務経験にはなりません。

【参照資料】

まとめと行政書士の見解

撤去工事の位置づけ 機械器具設置工事業の 実務経験としての計算
パターン1:

撤去+据付

一連の「機械器具設置工事」に含まれる行為 可能
パターン2:撤去のみ 工事の実態により以下に分かれる。

機械器具設置工事

とび・土工工事

の場合は可能

の場合は不可

結論として、撤去工事の経験を実務経験として主張できるかどうかは、「その工事が一連の機械器具設置工事に含まれるか、または単独の工事として機械器具設置工事に該当すると明確に説明できるか」にかかっています。

主たる工事がどれに該当するかは目的も重要だからです。

特にパターン2のような解釈が分かれうる工事については、契約書の工事名称や作業内容の記録を精査し、どちらの解釈がより実態に近いかを慎重に判断する必要があります。

建設業法に関する解釈は、時に非常に複雑で、複数の行政資料を横断的に読み解く専門性が求められます。判断に迷われた際は、個別工事ごとに専門の行政書士にご相談ください。貴社の工事内容を的確に分析し、法令に則った最適なご提案をいたします。

 

この記事の監修者

谷島 亮士
谷島 亮士