内容

はじめに… 1

建設業許可が必要な最低限の請負額… 1

特定建設業許可が必要な下請額… 2

監理技術者の配置下請額規定… 3

施工体制台帳及び施工体系図作成義務… 3

専任の配置技術者が必要となる現場の請負額… 3

特定建設業許可と監理技術者証の指導監督的実務経験の請負額… 5

特定専門工事の下請額… 5

金額規制まとめと早わかり表:特定建設業許可・主任や監理技術者・専任配置その他… 6

 

はじめに

建設業法には様々な金額の規制があり、それらは改正が多く、インターネットの情報も過去のものが多い状況です。

 

さらに、請負額だけでなく下請額や、材料費を控除できない規定などもあり多様です。

 

2025年6月時点、マンションをはじめとした建設費高騰・高いインフレ率が止まった状況で4月改正を経たこの時点で、長く維持されると思われます。そこで以下の通り金額規制の重要なものすべてを網羅します。

 

 

建設業許可が必要な最低限の請負額

まず、軽微工事の定義です。誰もが必要となる一般建設業許可が必要となる請負金額は以下の通りです。

1. 建築一式以外:500万円以上

2. 建築一式:1500万円以上又は木造住宅150平米未満

 

上記は材料も含みます。

 

建設業法施行令

(法第三条第一項ただし書の軽微な建設工事)

第一条の二 法第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、千五百万円)に満たない工事又は建築一式工事のうち延べ面積が百五十平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とする。

2 前項の請負代金の額は、同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする。ただし、正当な理由に基いて契約を分割したときは、この限りでない。

3 注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格又は市場価格及び運送賃を当該請負契約の請負代金の額に加えたものを第一項の請負代金の額とする。

 

特定建設業許可が必要な下請額

特定建設業許可が必要な金額は下請額です。元請かつ、(一次下請すべての)下請契約の合計です。以下の通りです。

1. 元請工事

2. 下請額5000万円以上

 

下請額とは、合計額を指します。

ただし、特定建設業許可の下請額は、材料を控除可能です。なぜなら、「注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格又は市場価格及び運送賃を当該請負契約の請負代金の額に加えたものを第一項の請負代金の額とする。」の金額除外規定が適用されません。

 

建設業法

(建設業の許可)

第三条 建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。

一 建設業を営もうとする者であつて、次号に掲げる者以外のもの

 建設業を営もうとする者であつて、その営業にあたつて、その者が発注者から直接請け負う一件の建設工事につき、その工事の全部又は一部を、下請代金の額(その工事に係る下請契約が二以上あるときは、下請代金の額の総額)が政令で定める金額以上となる下請契約を締結して施工しようとするもの

 

監理技術者の配置下請額規定

監理技術者の配置が必要な工事は、元請かつ、(一次下請すべての)下請契約合計が5000万円以上となります。

これは特定建設業許可が必要な工事と同じで以下の通りです。

1. 元請工事

2. 下請額5000万円以上

 

施工体制台帳及び施工体系図作成義務

 

監理技術者配置義務の要件に該当すると、同時に施工体制台帳及び施工体系図の作成義務が生じます。下請額である基準も同じです。

 

 

建設業法施行令:令和7年4月1日改正

 

(法第三条第一項第二号の金額)

第二条 法第三条第一項第二号の政令で定める金額は、五千万円とする。ただし、同項の許可を受けようとする建設業が建築工事業である場合においては、八千万円とする。

 

 

専任の配置技術者が必要となる現場の請負額

元請けからの請負金額が4500万円以上の重要な工事は、主任技術者を「専任」配置となります。つまり、4500万円「未満」なら主任技術者は非専任となります。

建設業法施行令:令和7年4月1日改正

 

(専任の主任技術者又は監理技術者を必要とする建設工事)

第二十七条 法第二十六条第三項の政令で定める重要な建設工事は、次の各号のいずれかに該当する建設工事で工事一件の請負代金の額が四千五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、九千万円)以上のものとする。

一 国又は地方公共団体が注文者である施設又は工作物に関する建設工事

二 第十五条第一号及び第三号に掲げる施設又は工作物に関する建設工事

三 次に掲げる施設又は工作物に関する建設工事

イ 石油パイプライン事業法(昭和四十七年法律第百五号)第五条第二項第二号に規定する事業用施設

ロ 電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第五号に規定する電気通信事業者(同法第九条第一号に規定する電気通信回線設備を設置するものに限る。)が同条第四号に規定する電気通信事業の用に供する施設

ハ 放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第二条第二十三号に規定する基幹放送事業者又は同条第二十四号に規定する基幹放送局提供事業者が同条第一号に規定する放送の用に供する施設(鉄骨造又は鉄筋コンクリート造の塔その他これに類する施設に限る。)

ニ 学校

ホ 図書館、美術館、博物館又は展示場

ヘ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条第一項に規定する社会福祉事業の用に供する施設

ト 病院又は診療所

チ 火葬場、と畜場又は廃棄物処理施設

リ 熱供給事業法(昭和四十七年法律第八十八号)第二条第四項に規定する熱供給施設

ヌ 集会場又は公会堂

ル 市場又は百貨店

ヲ 事務所

ワ ホテル又は旅館

カ 共同住宅、寄宿舎又は下宿

ヨ 公衆浴場

タ 興行場又はダンスホール

レ 神社、寺院又は教会

ソ 工場、ドック又は倉庫

ツ 展望塔

2 前項に規定する建設工事のうち密接な関係のある二以上の建設工事を同一の建設業者が同一の場所又は近接した場所において施工するものについては、同一の専任の主任技術者がこれらの建設工事を管理することができる。

 

 

 

専任特例1号の上限額

専任特例には2種類あり、どちらも専任現場があっても、現場兼務可能となります。その要件は多くありますが、金額の点は以下の通りです。

1. 建築一式以外:請負額 1億円未満

2. 建築一式工事業:2億円未満

移動時間その他要件が多く実行の前に体制チェックが必要です。顧問行政書士や谷島行政書士法人グループにご相談ください。

 

 

特定建設業許可と監理技術者証の指導監督的実務経験の請負額

特定建設業許可が必要な工事又は監理技術者証交付申請における指導監督的実務経験として認められるのは以下の通りです。

1. 元請工事

2. 請負額4500万円以上

 

特定専門工事の下請額

最後に、特定専門工事です。「特定専門工事」とは、下請が配置技術者不要となる一定の工事業種です。主任技術者の配置不要の例外となります。

第二十六条の三 特定専門工事の元請負人及び下請負人(建設業者である下請負人に限る。以下この条において同じ。)は、その合意により、当該元請負人が当該特定専門工事につき第二十六条第一項の規定により置かなければならない主任技術者が、その行うべき次条第一項に規定する職務と併せて、当該下請負人がその下請負に係る建設工事につき第二十六条第一項の規定により置かなければならないこととされる主任技術者の行うべき次条第一項に規定する職務を行うこととすることができる。この場合において、当該下請負人は、第二十六条第一項の規定にかかわらず、その下請負に係る建設工事につき主任技術者を置くことを要しない。

2 前項の「特定専門工事」とは、土木一式工事又は建築一式工事以外の建設工事のうち、その施工技術が画一的であり、かつ、その施工の技術上の管理の効率化を図る必要があるものとして政令で定めるものであつて、当該建設工事の元請負人がこれを施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額。以下この項において同じ。)が政令で定める金額未満となるものをいう。ただし、元請負人が発注者から直接請け負つた建設工事であつて、当該元請負人がこれを施工するために締結した下請契約の請負代金の額が第二十六条第二項に規定する金額以上となるものを除く。

 

その下請額上限は以下の通りです(建設業法施行令)。

1. 上限:4500万円

2. 建築一式はありません(特定専門工事のみのため)

 

特定専門工事に指定されているのは、建設業法施行令で列挙規定があります。以下の通りです。

建設業法施行令:令和7年4月1日改正

 

(特定専門工事の対象となる建設工事)

第三十一条

一 大工工事又はとび・土工・コンクリート工事のうち、コンクリートの打設に用いる型枠の組立てに関する工事

二 鉄筋工事

2 法第二十六条の三第二項の政令で定める金額は、四千五百万円とする。

 

金額規制まとめと早わかり表:特定建設業許可・主任や監理技術者・専任配置その他

区分 判定基準額 適用範囲・ポイント 法令根拠
一般建設業許可が必要になる軽微工事の上限 – 建築一式以外:500万円未満
– 建築一式:1,500万円未満または木造住宅 150㎡未満
請負金額(材料費を含む)で判断 建設業法施行令1条の2
特定建設業許可が必要になる工事 一次下請合計 5,000万円以上
(建築一式工事業は 8,000万円以上
「元請」かつ一次下請契約の総額で判定。材料費は控除可 建設業法3条・施行令2条
監理技術者の配置義務、施工体制台帳及び施工体系図作成義務 一次下請合計 5,000万円以上
(建築一式工事業は 8,000万円以上
元請のみ対象。額の考え方は特定建設業許可と同じ 建設業法26条・施行令2条
主任や監理技術者を“専任”で置く義務 請負 4,500万円以上
(建築一式工事業は 9,000万円以上
下請でも“重要な工事”に該当すると専任。これ未満なら兼任可 施行令27条
専任特例1号の上限 請負 1億円未満
(建築一式工事業は  2億円未満
移動時間その他要件あり 施行令28条
特定建設業許可営業所技術者及び監理技術者証の「指導監督的実務経験」としてカウントできる工事 元請請負 4,500万円以上 特定建設業許可が必要な額よりやや低いので注意 国交省通知
特定専門工事(型枠・鉄筋など)の下請額上限 4,500万円未満 条件を満たせば下請側の主任技術者配置が不要 施行令31条

建設業許可維持のために押さえておきたいポイントまとめ

  1. 「請負額」と「下請額」の違い
    • 請負額:自社が元請として受ける金額。材料費を含む。
    • 下請額:元請が一次下請に発注する合計額。特定建設業許可や監理技術者配置の判定に使う。材料費は控除できる。
  2. 2025年4月1日改正で金額が引き上げ済み
    建設費高騰を踏まえ、特定建設業許可・監理技術者配置の基準が 4500万円 → 5,000万円(建築 8,000万円)へ、監理技術者・主任技術者の専任基準が 4,500万円へ増加されました。今後しばらくはこの水準が続く見込みです。
  3. 専任”義務は現場単位で判定合算して 4,500万円を超えると専任配置が必要です。
    同一場所で一定の関連する複数工事を同一業者が行う場合は専任技術者が複数不要な例外があります。
  4. 特定専門工事は例外扱い
    型枠大工・鉄筋など、施工技術が画一的な 2業種のみが対象。下請額が 4,500万円未満であれば下請側の主任技術者を省略できます。監理技術者は適用ありません。
  5. 実務上の落とし穴
    • 見積り段階で材料支給の有無を確認しないと、監理技術者配置や特定建設業許可の要否を誤る。
    • 一般から特定への切替には営業所専任技術者の要件も再確認が必要。

以上、複雑な建設業の請負額・下請額要件を網羅し、まとめました。

改正が多いため、このような資料を整備し、頻発工事を内製化できれば良いと思います。そのようなプロジェクトも谷島行政書士法人グループにご依頼ください。

さらに、法規制の定期的なチェックも必要です。年1回は必要です。

谷島行政書士法人グループの顧問先様は、そのようなアドバイザリーのアウトソーシングで法令遵守を実現し建設業許可を維持しております。

ぜひお声がけください。

この記事の監修者

谷島 亮士
谷島 亮士